シュガーポット

唯一無二、作り手と成長していくアイテム“シュガーポット

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私がこのアイテムを手掛けるようになったのは10年ほど前。
一通りのものが作れるようになり、やはり作り手誰もが通る
「誰も作らない自分だけのアイテムを作ってみたい」という欲望が湧きあがり、
べっ甲製品にはあまり見られないものについて考えるようになりました。

頭に浮かんだものは片っ端から試作し始め、通常の作業時間が終わった後の時間が
これに当てられました。通常の製品作りでさえ楽しくてしょうがないのに
自分の思う物を形に出来る喜びに時間を忘れ試作品作りに没頭しました。
しかし今思うとあとひとひねりで製品となるものもありますが、
次々と出来上がるものは「試作品」の域を出る出来栄えのものはありませんでした。

若気の至りと言いますか「誰も作らない自分だけのアイテムを作ってみたい」という
強い思いはものすごい力を与えてくれましたが、芸術家かぶれした作り手の
一方的な「作ってみたい」思いばかりが優先され、
製品作りに忘れてはならないはずの「使い手の気持ち」を汲んで
製品作りをしていない事に気が付きました。

このときからまず自分が「使ってみたい」と思えるモノづくりに気持ちを切り替えました。
自問すると意外とすんなりと「べっ甲の製品をテーブルの上で使ってみたい」・・・
という気持ちが湧きあがり、それに従い出来上がったものが「シュガーポット」です。

当初「製品」と言うよりも「作品」という趣が強かった「シュガーポット」は
売るというよりも見せるモノとしてPRに使いました。
当工房の取材に来た方々に面白半分見て頂くと思いのほか反応が良く、
「珍しいアイテムなので記事に書きます・・・」とか
「代表作として写真を・・・・」とか、時には「雑誌の表紙に・・・」など
有りがたいお話を頂きで出し好調でした。

さらなる転機は「東京都伝統的工芸品チャレンジ大賞」という
作品品評会に出品する事になり、「シュガーポット」を
天然系塗料でコーティングしてバージョンアップした
「“洗える”べっ甲のシュガーポット」として出品した時です。

東京都産業技術研究センターの木下先生と共同で、
べっ甲の素材感を損なうことなくコーティングを施し、
ちょっとした洗浄が行えるよう加工した「“洗える“べっ甲のシュガーポット」。

扱いづらいという先入観を持たれ、
敷居の高い素材と思われていたべっ甲の弱点を克服し、
多くの一般の方々の票と審査員の方のご支持を頂き、
「東京都伝統的工芸品チャレンジ大賞」で賞を頂く事が出来ました。

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作り手の一方的な提案だけではなく、一般の方々の要望を取り入れて
バージョンアップした結果、その大切さに改めて気がついた良い経験です。
これ以降「製品」としてなるべく品切れにならぬよう店頭に並べる数は
常に作るよう心がける事になりました。

良い事か悪い事かわかりませんがモノづくりをしていて同じ物を作る時、
以前と「同じ物を再現する」感覚はありません。
どこかしらに「もっと使いやすく」の修正点が湧いて来るのでそれを考慮しつつ
バージョンアップしたものになります。
逆にいえば完璧なものを作っていない証明となってしまいますが、
その時その時のベストを注ぎ込んだものである事に間違いありません。

そういう意味で今後も作り続けるであろう、唯一無二の「シュガーポット」は
作り手と共に成長をしていくのでしょう。




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浅草・亀戸べっ甲職人の店「ベッ甲イソガイ」のオフィシャルブログです。

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