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べっ甲の素材のお話2

べっ甲の素材のお話1からの続きです        記事担当:磯貝剛

 私がデモンストレーションでオーストラリアのキャンベラ国立大学で
ワークショップをした時の話です。

キャンベラ国立大学の芸術学部のホールにて日本の文化の紹介する
機会がありました。沢山の学生の方が日本から来た職人衆の作業に興味津々。

その学生のなかのひとりの方が
「午後に面白いものをもってきてあげる。」と意味深な言葉を残し去っていきました。

午後になりその学生さんが持って来たモノは亀の甲羅。
しかもまぎれもなくタイマイの甲羅で、

「祖父が漁で採った亀の殻が家にあったから持って来た。」
と貴重な実体験をもたらしてくれました。

実は彼女、大学の近くから通う地元のアボリジニーの方でした。



ワシントン条約で本物の素材を持ち出せなかった私は樹脂
のフェイク素材をワークショップの材料としていたのですが
やはり普段使い慣れたべっ甲の素材に海外で出会えとても
感激して簡単なペンダントか何かをその場で仕上げて彼女
にプレゼントしたと思います。

私も職人なのでもちろん素材は欲しいですがやはりお金目
当ての乱獲は反対です。

食料確保のために海からは魚に限らずタイマイも得られるのなら、
その循環の中にべっ甲職人を組み込んでくれたらなんて幸せだろう
と勝手な想像してしまいます。

伝統的に日本で育った「べっ甲」という工芸が無くなってしまうのはやはり寂しいし、
天然素材ならではの「とてもいい肌触り」「軽さ」何よりも「素材の色合い」など、
五感に訴える豊かな素材であることも知ってもらいたいです。

今の私に世界的な条約を変える力もありませんし時間もありません。
自分に出来る事は、べっ甲という素材の良さが伝わるような品物を
一つでも多く作り上げ、愛着を持って使って頂ける方に使って頂くことだと思います。

貴重な素材だからこそ大切に作業していくことを心がけていきたい
とあらためて思ったありがたい体験でした。


べっ甲の素材のお話1

                               記事担当:磯貝剛

今回のお話はべっ甲細工の作り手としての職業上、素材として「玳瑁(タイマイ)」
という亀の甲羅を使わせていただいているので素材状況のお話を絡めた文章に
したいと思います。

ご存知の方も多いと思いますがべっ甲細工に使われる玳瑁という亀はワシントン
条約で商取り引きの輸出入が規制されています。実質べっ甲に使われる素材は
国内に保管されているストックのみ。



とはいえ、私の様な若輩の若い(?)職人がいなくもないべっ甲業界。
良く質問される「材料がなくなったらどうするんですか?」という問いもうなずける。

続けてこの仕事が出来ているべっ甲職人に共通する事は
先代や先々代の親方などが素材を蓄えていてくれた工房である事。
腕はあっても素材がなければやはり職人の数は減っていってしまう。
ありがたい事に私の工房にも材料の蓄えがたくさんあります。職人が
どんなに一生懸命手を動かしても出来高は知れたもの、私の代ですぐ
になくなってしまうとは到底思えない。

しかし、自分が続けていくには充分の素材があると
タカを括ってばかりはいられないのが現状です。

やはり新規の素材の補充ないままであると、業界に若い職人が芽生えづら
く当然、職人の高齢化は進みます。作られる製品も素材の枯渇を気にしながら
であると思いきったものが少なく「べっ甲」という製品自体の魅力も世間的に
薄れていってしまうのでは・・・・・と心配は尽きません。

そもそも「玳瑁(タイマイ)」という亀がどこに生息しているかと言うと、
赤道近くの暖かい海。日本近海では夏の間はかろうじてタイマイが
生存できる水温の様で沖縄の海域でまれに確認できる程度だそうです。

実際に素材として輸入されていた時はインドネシア周辺とカリブ海周辺の
タイマイが2大産地でした。もともとタイマイに限らずウミガメを貴重なタンパク源
として捕食していたこともあり、甲羅の部分は捨てられたり、簡単な細工など
する人もいたようです。

     〜ベッ甲の素材のお話2に続きます。〜


初遠征・フランスの片田舎−3



初遠征・フランスの片田舎−3”

「農家の納屋」ギャラリーから、「草っぱら」ギャラリーに場所を移動した我々職人衆。

絶え間なく「草っぱら」ギャラリーに訪れる地元も皆さまは、私の作った
(べっ甲のフェイクですが・・・)「かんざし」「ペンダント」「リング」などに
日本を感じてくれたらしくしきりに「売ってくれ」と。

私は「商売出来ているわけではないので売れません。」の
一点張りでかなりの人数の方にお断りをしなければなりませんでした。

しかし、しばらくすると地元の方々だけあって家から出直して来たらしく、
「ワイン」や「パテの瓶詰」「チーズ」などを手に
「売るのではなく、物々交換しよう」とやってきました。


お金ではないやり取りに新鮮さを覚え、フェスティバルも最終日であったので、
次から次へと「物々交換」を行いました。

ワインは10本を超え、どれも置いていくことが出来ず
帰りのスーツケースには「HEAVY」のステッカーが貼られました。

他には地元のロウで絵を描き上げるアーティストの方とはお互いの
作品を交換しました。ステンドグラスの様な色使いで、青の背景に、
印象的な鮮やかなひまわりが描かれた大胆な絵でした。


会場にはバンドの生演奏、子豚の丸焼き、ヤギチーズ、
ワイン、ビール。盛り上がらないわけがありません。

私の許容量を超えたアルコールも、カラッとした異国の空気のせいか
いつも以上に楽しさが増し、まさに円滑剤となりました。


日本の文化の一端を背負って海外を旅する「文化交流」。
もしかしたらトンチンカンな日本を披露していたのかもしれませんが、
自分が出来る最大限の力で過ごした2週間、今の私の価値基準に
大きな影響与えていることに間違いない体験でした。


この旅のきっかけを与えてくれた「とても偉大な職人さん」への
感謝はもちろん、日本人、外国人関係なく、出会うことへの有難さ
を実感できるようになった「初遠征」でした。

 


初遠征・フランスの片田舎−2


〜初遠征・フランスの片田舎−1からの続きです〜

        

我々職人衆が実演するのは「農家の納屋」。

石造りの重厚な造り、日本の木造の納屋とはまた違う独特の空間にワクワクしつつも
ガラーーーんとだだっ広い空間。部屋中に敷き詰められたというか落ちているワラ。

私ははじめ展示自体「カッコが付くのか?」がとても心配になった。

しかし一緒に行ったのは全てのことを楽しめる心強い先輩たちだった!!

干し草を固めたものが実演台。
それぞれの職人持参の製品を並べて仕事着に着替えれば
フランス片田舎の「農家の納屋」が粋な職人のステージに!

ワシントン条約で材料を持ち出せない私の実演はべっ甲のフェイクでしたが、
作務衣を着て、日本から持って行った自作の実演台で気合を入れた「海外での初陣」
でした。フランス人のボランティアの方にべっ甲の説明をフランス語版に訳してもらい、
身振り手振りでたくさんの方と交流しました。

中でも記憶に残っているのが、珍し半分しょっちゅう見学に来ていた
「地元の小学生軍団」との交流。拉致され連れてかれたのは彼らのお宅。

滅多には入れないローカルな雰囲気、石造りの壁や床、綺麗に飾られた
鉢植えの花、見る物すべてに感動しつつ小学生たちと他愛のないやり取りで
盛り上がっていました。



彼らは私が着ていた作務衣やダボシャツに「武士道」もしくは「空手家」の
雰囲気を感じているようで、とにかくまとわりついてきました。

この時もそうでしたがこの旅の間ほとんどの時、
「作務衣」か「ダボシャツ」「セッタ」の風体で荷物は「風呂敷」に入れていました。
海外初陣の謙虚さ(?)から過剰に「日本」というものをアピールしなくては!
と真剣に考えた私なりの正装でした。

  〜もう一話続く予定です〜


初遠征・フランスの片田舎−1

稲と麦のフェスティバルinアルセ村、ブーゴン村

この仕事を始めて数年目(今回の記事担当は剛です)、
東京の伝統工芸関係で知らぬ者はいない、「とても偉大な職人さん」の
工房にごあいさつに訪れる機会がありました。

初夏のその頃、薄暗い工房では数人の職人衆が汗をカキカキ・・・
当時の私には初めて遭遇する「他の工房の熱気」。感じた迫力は未だ
頭の中に映像として保存されています。

汗を拭き拭き現れた「とても偉大な職人さん」は開口一番に、

「君!うちの息子とフランスに行って来なさい。」

「・・・・?」

突然言われた、ほぼ命令形のその一言に戸惑いながらも断る理由も
見当たらず曖昧な返事を残しつつ工房をあとにしました。

「中世の古城」、「一面のひまわり畑」、「昼間から飲む赤ワイン」・・・・・
来てしまいましたフランス!

フランス人の方が企画した日本とフランスの文化交流「麦と稲のフェスティバル」。
フランスの中央に位置するロワール地方・アルセ村、ブーゴン村で行われました。

日本からは我々職人衆、セミプロの音楽家、農家の方、学生・・・が参加、
100人位だったのかなあ。

日本から参加したメンバーはそれぞれの表現をするための場所に準備のため,
しばしのお別れ、

そして我々職人衆が実演するのは「農家の納屋」。

職人衆、現場を目の当たりにし「・・・・・・・」

だいじょうぶか???

              〜続きます、次回は13日の予定です〜


シュガーポット

唯一無二、作り手と成長していくアイテム“シュガーポット

20120615-03.jpg

私がこのアイテムを手掛けるようになったのは10年ほど前。
一通りのものが作れるようになり、やはり作り手誰もが通る
「誰も作らない自分だけのアイテムを作ってみたい」という欲望が湧きあがり、
べっ甲製品にはあまり見られないものについて考えるようになりました。

頭に浮かんだものは片っ端から試作し始め、通常の作業時間が終わった後の時間が
これに当てられました。通常の製品作りでさえ楽しくてしょうがないのに
自分の思う物を形に出来る喜びに時間を忘れ試作品作りに没頭しました。
しかし今思うとあとひとひねりで製品となるものもありますが、
次々と出来上がるものは「試作品」の域を出る出来栄えのものはありませんでした。

若気の至りと言いますか「誰も作らない自分だけのアイテムを作ってみたい」という
強い思いはものすごい力を与えてくれましたが、芸術家かぶれした作り手の
一方的な「作ってみたい」思いばかりが優先され、
製品作りに忘れてはならないはずの「使い手の気持ち」を汲んで
製品作りをしていない事に気が付きました。

このときからまず自分が「使ってみたい」と思えるモノづくりに気持ちを切り替えました。
自問すると意外とすんなりと「べっ甲の製品をテーブルの上で使ってみたい」・・・
という気持ちが湧きあがり、それに従い出来上がったものが「シュガーポット」です。

当初「製品」と言うよりも「作品」という趣が強かった「シュガーポット」は
売るというよりも見せるモノとしてPRに使いました。
当工房の取材に来た方々に面白半分見て頂くと思いのほか反応が良く、
「珍しいアイテムなので記事に書きます・・・」とか
「代表作として写真を・・・・」とか、時には「雑誌の表紙に・・・」など
有りがたいお話を頂きで出し好調でした。

さらなる転機は「東京都伝統的工芸品チャレンジ大賞」という
作品品評会に出品する事になり、「シュガーポット」を
天然系塗料でコーティングしてバージョンアップした
「“洗える”べっ甲のシュガーポット」として出品した時です。

東京都産業技術研究センターの木下先生と共同で、
べっ甲の素材感を損なうことなくコーティングを施し、
ちょっとした洗浄が行えるよう加工した「“洗える“べっ甲のシュガーポット」。

扱いづらいという先入観を持たれ、
敷居の高い素材と思われていたべっ甲の弱点を克服し、
多くの一般の方々の票と審査員の方のご支持を頂き、
「東京都伝統的工芸品チャレンジ大賞」で賞を頂く事が出来ました。

20120615-02.jpg20120615-01.jpg 

作り手の一方的な提案だけではなく、一般の方々の要望を取り入れて
バージョンアップした結果、その大切さに改めて気がついた良い経験です。
これ以降「製品」としてなるべく品切れにならぬよう店頭に並べる数は
常に作るよう心がける事になりました。

良い事か悪い事かわかりませんがモノづくりをしていて同じ物を作る時、
以前と「同じ物を再現する」感覚はありません。
どこかしらに「もっと使いやすく」の修正点が湧いて来るのでそれを考慮しつつ
バージョンアップしたものになります。
逆にいえば完璧なものを作っていない証明となってしまいますが、
その時その時のベストを注ぎ込んだものである事に間違いありません。

そういう意味で今後も作り続けるであろう、唯一無二の「シュガーポット」は
作り手と共に成長をしていくのでしょう。



ロゴに込めた思い

新しく変わった「ベッ甲イソガイ」のロゴ、大げさにお思いになるでしょうが、ここには
ベッ甲イソガイの「〜これまで〜今〜これから〜」の思いを詰め込むことが出来たと感じています。

元々「鼈甲磯貝」と漢字で表記し職人の無骨さ、べっ甲の希少さを存分に示すことが出来ました。
その反面、読みにくい、書きにくい難しい漢字であり親しみを感じていただくのに苦労しました。

現在当工房では無形文化財の磯貝實を代表にし、息子である磯貝剛、磯貝克実、磯貝大輔の
4人の作り手により製作を行い、浅草店、亀戸店にて作り手により販売も行なっております。
(もちろんこの行いを支えてくれている心強いスタッフのサポートを無視することは出来ませんが、、、、)


20120606-02.jpg


ロゴにはこの作り手4人がベッ甲イソガイの礎であることを示すため、
カタカナの「イソガイ」の各文字の右上から左下にカーブするラインを揃えました。
4文字のラインと作り手4人、お互いの協調があってこその「ベッ甲イソガイ」という
意味が詰まっています。

新しいロゴと共にべっ甲という魅力のある素材を少しでも多くの皆様に知って
いただけるよう作り手4人、挑戦していきますのでよろしくお願いいたします。


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浅草・亀戸べっ甲職人の店「ベッ甲イソガイ」のオフィシャルブログです。

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